鎮鳴鍼の臨床

症状 めまい 頭痛 首肩の凝り

K・Yさん 42歳 女性

頭がボーっとして、時々左側の頭が痛み、あたかも地震があったかのようなクラッとするめまいが、1日に何度もありました。さっき地震があった?と家族に尋ねると、「ないよ」と、怪訝な顔で言われてしまいます。段々と頭がおかしくなってきたのかと、鬱々した気持ちになってしまいました。

担当者よりこれらの症状は、自律神経系の失調で起こることが多い。舌を診ると、全体に膨らんでいて淡いピンク色をしている。また、湿潤した白い苔が薄く乗り、歯で圧迫されている痕が、舌の側面に残っている。脈は弱く、ピンピンと響く弦脈で、肝虚症。東洋医学でいう肝が弱っている病態だ。両脇が張り、腹直筋も筋張っている。おまけにへその周りを押さえると腹大動脈の拍動が強く感じられる。新陳代謝の低下と精神疲労があるのは、明らかだ。体質的なものか、ストレスがあるのか、それとも更年期障害の前触れか、いずれにしろ自律神経の調整をしなければならないのは必至である。それには頭にある百会や神庭(しんてい)と攅竹(さんちく)というツボは欠かすことができない。その他、背中にある至陽や霊台(れいだい)、足の三里(さんり)、行間(こうかん)、臨泣(りんきゅう)、照海、三陰交(さんいんこう)、液門(えきもん)などのツボも利用価値がある。手のひらにある労宮(ろうきゅう)というツボに小さなお灸を据えると更に効果的だ。その他、「痰なければ、鬱なし」という古人の教えから、消化器系の調子も良くしなければならない。色々なツボの名前を並べたが、要は熟慮して最適なツボを選んだということだ。先ずは、曲泉や陰谷(いんこく)、太衝と云うツボに鍼で軽い刺激を与え、そのあと、上記のツボを適宜選んで治療を施した。すると、2~3回の治療で軽快し、7回目の治療でほぼ改善し、治療を終えた。