緑内障や黄斑変性、網膜症でお困りの方に朗報!
緑内障は日本人の途中失明の原因の第一位です。しかも日本人に多い緑内障は点眼薬が効きにくい正常眼圧緑内障です。徐々に進行して視野狭窄を起こし、場合によっては視野を失ってしまいます。でも、ギブアップしないでください。
網膜血流を高める晴明活脳鍼に期待してください。
鍼灸は古くからこれらの疾患に効果があるとされていますが、活脳晴明鍼を併用すると、更に効果的です。その裏付けの一端をレーザースペックルフローグラフィーという網膜血流を計る医療器を用いた調査で証明しました。
つまり、網膜血流の増加と眼圧の低下が確認されたのです。これにより、視野狭窄の進行を緩和させる可能性が見いだせたのです。実際の臨床でも、視野狭窄の進行が止まった例が多数あります。なかには欠損部が縮小したと眼科医から言われたという方もいます。
勿論、学習効果によるものかもしれませんので、活脳晴明鍼の効果とは断定できませんが、喜ばしいことです。
いずれにしろ、適度な運動に励み、十分な睡眠、栄養の偏りのない食事、そしてストレスをため込まないということです。
それだけでも視野狭窄が改善すると断言している眼科医もいるからです。
つまり、日本人に多い正常眼圧緑内障は視神経の脆弱性が原因とも言われていますので、網膜血流を高め、視神経を強化することが必要なのです。
当然、黄斑変性も網膜症も網膜血流が改善すれば進行を遅らせることができるでしょう。どちらも発症の原因に血流不足があるからです。
眼科の治療で眼圧を下げ、活脳晴明鍼で網膜血流を高めれば、理想的な緑内障対策になります。
因みに網膜は眼球の一番深い所にあるので眼底とも呼ばれ、瞳孔を通して直接観察することができます。健康診断の眼底検査は網膜の血管や神経の状態を調べます。
では、活脳晴明鍼の作用機序を理解する上で必要な目の基礎知識をご説明します。
目の構造
■目はカメラ
幕末をテーマにした映画を思い出してください。たまに大きな箱型のカメラで写真を撮られている武士の姿が出てきます。いわゆる写真機と言われていた時代のカメラです。その武士も、空っぽの箱( 暗室 )があるだけで器械らしい器械は見当たらず、辛うじてレンズが付いているのを確認してはじめて「これは単なる箱ではなく、カメラなのだ 」と思ったに違いありません。
目の構造はそのカメラそっくりで、レンズにあたる水晶体、暗室にあたる部分の硝子体、フィルムにあたる網膜、そして、カメラボディにあたる強膜が全体を包んでいる、これですべてと言えば言えるのです。
もちろん実際はそんなに単純ではなく、カメラで言えばレンズフィルター、絞りに
あたる角膜、虹彩、それらを保護したり操作したりするデリケートな仕組みもあります 。
まず、眼球の大半を占める硝子体は、角膜・前房・水晶体を通過してきた光が網膜で
像を結ぶときに通り抜ける部分ですから透明な組織で、質的には水分をたっぷりと含んだコラーゲンでできています。
網膜を裏側からその機能を助けているのが脈絡膜。暗室を作るためにこの膜はメラニン色素をたくさん含んでいて、毛細血管も発達して血流も盛んです。虹彩はカメラの絞りにあたり、光の量を調節しています。
ここでは目の構造が簡単であることを強調しましたが、わかりやすくするためであって、実際は複雑ですし、未だに解明できていないこともたくさんあります。また、目の構造は脳とつながって初めて視覚が働くわけで、もちろん単純ではありません。その点は誤解のないようにお願いします。
■見ているのは「目」ではなく、じつは「脳」
「あなたは何で物を見ていますか」と訊かれたら、大概のひとは疑うことなく「目」と答えるでしょう。
もちろん正しい答えなのですが、完璧な答えにはなっていません。たしかに画像が映って見えるという現象は眼球の作用ですから答えは「目」でよいのですが、その画像をそれぞれ「緑の木の葉だ」「赤い花だ」「だれだれさんの顔だ」と認識しているのは、じつは「脳」の働きなのです。
画像の認識ということが解りにくいかもしれませんが、夢を見ていることを思い出してみてください。
たとえば夢の中で海の景色を見ているとすると、その場合けっして「目」で海を見ているわけではありません。しかし、あなたははっきりと海の景色を見ていますし、ときには打ち寄せる白波の音も聞こえているかもしれません。
そのときの海の映像は「目」が見ているのではなく「脳」が見ている、つまり認識し
ているのです。もちろんそこには過去に見た海の映像を記憶しているという別の「脳」の仕組みが働いています。
眼球の造り自体は非常に精密ですが、その構造はある意味で簡単とも言えるでしょう。そして、目からはいった光の情報が神経を伝わって「脳」とつながったときに、はじめて物を見るという素晴らしい機能が働きます。
また、脳の下部にある脳幹から眼球の運動を司る筋肉に神経がのびています。更に網膜に映った画像は眼底にある視神経から視床を介して後頭葉、前頭葉に伝わっています。
昨今、PCやスマホの見過ぎで目を酷使しています。脳も同時にフル活動させるので、脳も目も極度に疲労しています。つまり、脳は血流を増加させ画面の情報を理解し、推理して、それを元に創造し、実行に移りますが、次第に疲れが溜まり、的確な情報処理ができなくなります。肩もこり、頭も重くなりぼっとしてきます。目もショボショボして文字がかすんできます。しっかり眠って適度な運動をすれば、リセットされますが、同じような状況が長く続けば、更に目の痛みの他、不眠や動悸など、精神神経症状も起こります。こうなると目の疲れという言葉では済まされません。眼精疲労に陥っています。全般的に交感神経が緊張しているので、様々な症状があらわれるのです。
眼精疲労は網膜の血流も低下させます。交感神経の働きは血管を縮ませますので、当然の成り行きです。目の奥が痛むのは眼底血流が減少している証拠です。
目のピントを調整する毛様体筋も交感神経が優位になると、弛緩して画面がぼやけてきます。近くのものに焦点を合わせにくくなるからです。また、毛様体筋の付け根の房水がつくられますが、これも交感神経の過緊張により房水が増産されるとともに排出も低下します。当然、眼圧も高くなります。
眼精疲労は脳や網膜の血流が低下した状態で、上記の通り長く続くと、緑内障の発症原因にもなりますし、緑内障の悪化を助長する因子にもなりのです。
したがって、眼精疲労や緑内障対策には脳と網膜の血流を低下させないことが肝要なのです。そのために大きな力となるのが活脳晴明鍼なのです。
加齢性黄斑変性も網膜症も網膜の血流の悪化により発症したり増悪したりすると言われています。
そこで、これらの眼底疾患について引き続きご説明します。病態を把握していないと、活脳晴明鍼の作用と効果が理解しにくいからです。
眼底疾患
目の病気は色々ありますが、昨今、途中失明の可能性がある緑内障や加齢性黄斑変性、網膜症などの眼底疾患が増えています。学者の多くがPCやスマホの使い過ぎや運動不足、食生活の欧米化が原因と述べています。
誰の目から見ても、生活様式の欧米化、並びにコンピューターやスマホが普及するようになるとともに緑内障や加齢性黄斑変性、網膜症などの眼科疾患が増加したのは確かです。
一般的に緑内障は眼圧が異常に高くなった状態を言えます。眼球内には房水と呼ばれる液体が血液の代わりに流れていて、各部に栄養を運んでいます。房水の組成成分は血液の血清とよく似ていますが、その流れが何かの加減で止まり、眼球内に房水が溜ってしまうことがあります。すると循環眼球内の圧力が高まり、そのわずかな圧力の贈加によってデリケートな視神経は機能を失ってしまうことがあります。視神経は約100万本ありますが、その数は年齢とともに減っていき、半分くらいになると視野検査で異常が見つかります。眼圧が高くなると視神経の衰退が早まったり、あるいは網膜の奥で視神経が束になっている部分の視神経乳頭が傷められたりして、神経が機能を失うことがあります。カッピングと呼ばれています。
房水の循環機構に支障をきたす原因は、循環を終えた房水を外へ排出している角膜と虹彩の境にある前房隅角と呼ばれる部位に何らかの障害が生じるためで、その結果、充分な排出がなされなくなり、溢れた房水が眼球内に溜まって眼圧を押し上げます。
眼圧は健康な人で10~20mmHgですが、眼圧の上昇はたとえわずかであっても視神経には取り返しのつかないダメージを与えることがありますので、池断は禁物です 。
最近は眼圧だけではなく、網膜の血流も緑内障の発生や予後に深く関与していることが解りました。網膜の血流が低下すると視神経に栄養や酸素が十分に供給されなくなり、視神経が萎縮するようになります。網膜の血流をリアルタイムで測定できるレーザースペックルフローグラフィーを用いた検査が多くの大学病院眼科で行われ、この病理が定説になりつつあるのです。日本人に多い正常眼圧緑内障の予後診断に利用されています。眼圧が低くても網膜血流が正常でなければ緑内障を悪化させてしまうのです。
急性型と慢性型の2タイプがある
緑内障は、ある日突然、眼圧が上がり、激しい頭痛、目の痛み、吐き気などの発作を伴う急性型と、眼圧がある程度高い状態が続いて、症状としては目の疲れ、肩こりなどを感じる程度のことが多い慢性型との2タイプに大別できます。
前者の多くは「閉塞隅角緑内障」と呼ばれる病症、後者の多くは「開放隅角緑内障」と呼ばれる病症です。
急性型は激しい頭痛や吐き気を伴いますから、はじめは眼科医院ではなく内科医院に飛び込む患者さんもいます。その場合は医師の判断で「眼科へ行くように」という指示が出ますが、慢性型の場合は、初期段階では無自覚、無症状で、せいぜい目の疲れを感じる程度だったりしますので、しばしば発見が遅れることもありますので要注意です。
次の段階では視野狭窄が始まりますが、多くは鼻側(内側)の視野から見えにくくなり始めます。しかし、徐々に進行するために本人の自覚が弱く、視力低下や視野が狭まっていることに気づいたときには、すでに病気がかなり進んでしまっている例も少なくありません。
したがって、急性型、慢性型にかぎらず、日ごろの目に対する関心度が発見の遅れによる緑内障の進行を防ぐことになりますので、眼科の検診を怠らないようにしてください。本Webの内容も参考になるはずです。
高眼圧症と正常眼圧緑内障
正常な眼圧は10~20mmHg基準値がありますが、あくまで平均値であって血圧と同様にすべての人にそのまま当てはまるわけではありません。なかには眼圧が高くても障害が出ない人もいます。そのような症状を高眼圧症と呼びますが、現時点では症状が出ていなくても将来的に「緑内障」を発症する可能性が高いので、そのような方は定期的に専門医の検診を受けて経過をみる必要があります 。
逆に眼圧は正常値の範囲なのに視野や視力に症状が現れる例もあります これは個としてその人の正常眼圧を超えてしまったと考えられます.このような場合を「低眼圧緑内障」または「正常眼圧緑内障」と呼びます。このタイプの「緑内障」は、はっきりした自覚症状が出な いために対応が遅れがちですので、定期的に眼科医の診察を受けて経過をみるようにします。
緑内障の標準的な治療
緑内障の治療は、まず眼圧を下げることからはじまります。その方法は、ふつう眼圧を下げる薬を最初に使います。薬には点眼薬と服用薬とがありますが、緊急のときは点滴を行うこともあります。
点眼薬には2つの作用があって、1つ目は瞳孔を縮める作用、もう1つは房水の分泌を抑える作用です。1つ目の作用がなぜ有効かというと、瞳孔が開くと房水の出口である前房隅角が圧迫されて房水が外に出づらくなるので、逆に縮めてやることで出口を広げてやり、房水が外へ流出しやすくするのです。
2つ目の作用は、余分な房水を作り出さないように毛様体に働きかけてやります 。
飯み薬にも2つの作用があります。1つ目は房水の生産を抑制する作用、2つ目は血液の浸透圧を高める作用です。
この1つ目はそのままの作用ですが、2つ目は少しわかりづらいかもしれません。浸透圧とは、塩水の例で言えば、膜を隔てて濃い塩水と薄い塩水とが隣り合うと、薄い塩水は濃い塩水のほうへ吸い取られていく現象を言います。それと同じ理由で、血液の浸透圧を高めてやると房水は吸い取られて外へ流出しやすくなるのです。
手術は、緊急なとき、あるいは薬ではコントロールしきれないときに行います。方法はいろいろありますが、考え方としては房水が流出しやすいように出口を作ります。具体的には局所麻酔をして、虹彩、眼球璧、前房隅角などを切除·切開します 。またメスを使う手術だけではなく、レーザー光線を使う方法なども普及してきています 。
手術にもレーザー治療にもそれぞれ一長一短があります。手術が切開・切除するのに対して レーザーは虹彩や隅角を焼いて穴を開けます。
手術と比較した場合、その効果はやや劣ると言えますが、半面、眼球を切らずに治療できる利点があります。また、レーザー治療では効果が上がらないと判断した場合、あるいは一度レーザー治療をしても効果が上がらなかった場合、手術を選択することになります。
したがって、いずれの方法を選ぶかの判断は、どちらが優れているかではなく、緑内障の進行度などを考慮したうえで、医師と相談をして決めることになります。
■網膜症
網膜疾患は網膜症、眼底出血、網膜剥離、網膜色素変性、老人性黄斑変性症などがあります。ことに最近、社会問題になっているのが網膜症です。網膜症の多くは高血圧症や糖尿病の合併症ですが、特に糖尿病性の網膜症が急増しています。原因は絶えず血液が高血糖状態になっているため、網膜の血管が動脈硬化を起こすことです。
その結果、網膜の血管から滲出液が漏れだし、網膜に浮腫が生じます。網膜剥離の原因にもなります。
更に悪化すると、血管が詰まり網膜の細胞に酸素や栄養素が十分に行き届かなくなります。それを補うために新生血管を作るようになります。ところが、新生血管は脆いので、出血しやすくなります。これが眼底出血です。
治療としては、まずは血糖のコントロールです。高血糖状態が続くと、網膜症も悪化してしまうからです。また、眼科では新生血管の発生を抑え、進行を遅らせるためにレーザー光線を利用した網膜光凝固術を行います。長期に渡り眼科医による検査と治療が必要です。
■黄斑変性
黄斑変性は加齢とともに増加する疾患でで、加齢性黄斑変性とも呼んでいます。萎縮型と滲出型に分けられます。萎縮型は黄斑部の網膜色素上皮細胞とブルッフ膜の間に老廃物が溜まり、その結果栄養不足となり、網膜色素上皮が徐々に萎縮していきます。そのため、中心部の視力が低下するのが特徴です。進行も緩やかなので、加齢性の変化として扱われることが多いようです。
滲出型は網膜の血流が悪くなり、黄斑部に血液を介して十分に栄養や酸素を届けることができなくなると、新生血管を作り、補おうとします。ところが、脆弱な血管のため蛇行したり膨らんだりするので、黄斑の栄養血管としては役目を果たせなくなります。新生血管から漏れた滲出液が黄斑に浮腫を起こしたり、新生血管が破れて黄斑出血を起こしたりしてすることで、黄斑に機能低下や壊死が起こります。黄斑部は目の中央部にありますので、視野の中央が欠けるという特徴的な現象が発生します。進行すると失明することもあります。
日本人は滲出型の黄斑変性が多く、その分危険度が高いと言えます。 検査や治療が必要なのは言うまでもありません。
以上、眼疾患の基礎的な知識が得られたところで、活脳晴明鍼の作用機序をお説明します。
ポイントは網膜の血流です、緑内障や黄斑変性、糖尿病や高血圧からの網膜症も網膜の血流状態が悪いと、悪化しますし、発症の原因にもあります。
活脳晴明鍼は網膜(血流)を増加させる
レーザースペックルフローグラフィーというリアルタイムで定量的血流の変化が追える医療機器を用いて、活脳活脳鍼施術前と施術後の網膜血流を調べました。
被験者は活脳晴明鍼を受けている緑内障5名、黄斑変性1名、糖尿病性網膜症2名の計8名でした。夫々眼科医による確定診断を受け、眼科の治療も併用していました。
レーザースペックルフローグラフィー
ポータブル眼圧計
目的は活脳晴明鍼の緑内障や黄斑変性、網膜症に対する効果の裏付けを取ることでした。つまり、活脳晴明鍼を行うことにより網膜血流が促進されれば、活脳晴明鍼には難治な眼疾患を改善させる作用があると示唆されるからです。網膜血流の増加は緑内障や黄斑変性、網膜症の発生を抑制するばかりか、予後を良好にすることが明らかになっています。こと緑内障に関しては、眼圧の高低もさることながら、網膜血流の改善が悪化を防ぐ大きな手段になっています。
結果
被験者全員の活脳晴明鍼施術後の血流が増加していました。特記すべきは正常眼圧緑内障の被験者は5名でしたが、うち4名の眼圧が低下していたことです。恐らく副交感神経系が優位になり、反射的に房水の排出が促進したのでしょう。正常眼圧緑内障の眼圧を下げることは点眼薬をもってしても非常に難しいことです。“眼圧が正常でも貴方にとっては高い”と、眼科医に言われることが多々あるはずです。患者さんにとってはとても辛いことです。活脳晴明鍼は網膜血流を増加させ、その上眼圧まで下げるのですから、緑内障の方に大きな福音になることでしょう。
詳しくは次のタブをクリックしてください。
活脳晴明鍼の作用機序の考察
そこで、活脳晴明鍼の刺激伝達系を考察してみました。
配線がなければ電気が流れても電球はつかないと同じように活脳晴明鍼の刺激が網膜や毛様体に達する神経経路がなければ、活脳晴明鍼の作用機序も推測できません。
そこで、まず最初に活脳晴明鍼は脳卒中の後遺症対策として実践している活脳鍼の作用機序を元に開発されたことをお伝えします。
活脳晴明鍼も基本とするツボは活脳鍼とは同じなので、顔面に分布している三叉神経や顔面神経を刺激します。これらの神経は脳神経なので、手足や体幹部の知覚神経と異なり、直接脳に伝達されます。
しかも、その刺激は脳血流を増加させます。その裏付けとして鍼灸による刺激が脳のアセチルコリン受容体に作用し、脳血管を拡張し血流を増加させるとの学会報告があります。つまり副交感神経系に働きかけるということです。
実際、活脳鍼による顔面への鍼刺激でも、明らかに脳血流の増加が認められます。しかも増加量は手足や体幹部へ鍼刺激を遥かに上回っています。これは、光トポグラフィーを用いた調査で確認しています。顔面の神経への刺激は短い伝導路で脳に届くので、減弱する度合いが少ないのでしょう。
この活脳鍼ですが、脳卒中の後遺症に非常に有効な鍼灸治療法です。
40年近い臨床で数多くの回復例をみていますので、効果の程は間違いありません。
また、脳卒中の後遺症による運動麻痺や感覚麻痺、複視、同名半盲、構音障害、嚥下障害、高次機能障害のみならず、うつや不眠、健忘症、ストレス障害なども改善していますので、活脳鍼による刺激は全脳に影響を及ぼしていると推測できます。
特筆すべきは脳幹の障害による複視、羞明、眼瞼下垂、めまいなどの改善率が非常に高いことです。
脳幹の出血や梗塞は死亡率が高く、一命を取り留めても上記のような後遺症を残すことがあります。この後遺症は現代医学をもってしても回復する確率は低く、人事を尽くして天命を待つといった状況です。
ところが、活脳鍼を行うと、殆どの症例で改善がみられ、中には数年来の複視が完治してしまう例もあります。
このように活脳鍼は脳卒中の後遺症に効果的な鍼灸治療ですが、活脳晴明鍼に利用する顔面のツボも基本的に変わりはないので、活脳晴明鍼でも脳血流は増加しているはずですし、多くの脳領域を刺激している可能性が高いと考えられます。脳幹への刺激の波及も活脳鍼と同じと考えられます。
したがって、以後活脳晴明鍼の脳への作用は活脳鍼と同様とし、考察することにします。
活脳晴明鍼のうち、こめかみや目の周囲のツボは三叉神経を刺激し、唇や耳の周囲のツボは顔面神経や迷走神経に影響を与えます。
特に顔面神経や迷走神経への刺激は黄斑変性や糖尿病性網膜症の治療には必須です。
これらの刺激は直接脳幹に届きます。また、大脳皮質の入り口にあたる視床を介し、大脳の各連合野に運ばれます。連合野からのフィードバック刺激が加われば、脳幹に与える影響は更に大きいものと推測されます。
視床は刺激伝達の中継点
視床は様々な情報を集め、大脳に届ける分配器のような役目を担っています。
そのため視床には情報を出入力する複数の神経核が存在します。
最も研究が進んでいるのは特殊核で、感覚や運動の中継点としての役割があります。
また、各脳領域間の連絡を取り合ったり、各脳領域からの信号を大脳にフィードバックする経路でもあります。
つまり、高次機能を司る大脳皮質と盛んに連絡し合っているのです。
その大脳皮質ですが、視ることに関して総合的な働きをするのが前頭連合野です。加えて頭頂連合野も側頭連合野も後頭連合野も重要です。
頭頂連合野は皮膚の触覚、温度感覚、痛覚や、筋肉や関節など深部感覚の他、視覚、聴覚を統合して自身の空間認識を行う機能があります。
側頭連合野は視覚野や聴覚野からの情報を整理して、色や形、音を認知し記憶します。
後頭連合野は一次視覚野からの色や形、動体や立体的な視覚情報を認識し、動体や立体的な視覚情報は頭頂連合野に、色や形などの視覚情報は側頭連合野に送ります。これにより更に正確に修飾された情報が生まれるのです。
前頭連合野は各連合野から送られてくる全ての情報を理性で判断し、予測や計画を立てるとともに実行するという機能があります。
大脳皮質-大脳基底核ループ
このように大脳皮質の最高中枢である前頭連合野は各連合野からの情報を受けているのです。
それだけではなく、大脳皮質から大脳基底核に情報を送り、視床を介して再び大脳皮質に戻すという回路も知られています。
つまり、大脳皮質の様々な情報が速やかに大脳基底核の淡蒼球、黒質に届き、視床を介して大脳皮質に戻る回路や、線条体から淡蒼球、黒質に投射し、視床から大脳皮質に戻る直接路です。
投射とは、神経の線維を伸ばして相手に情報を与える専門用語です。
結局は伝達することを意味しています。
大脳基底核は運動調節や認知、感情、動悸づけなど様々な機能がありますので、情報を吟味し、修正したり勢いづけたり、削ったりして大脳皮質に戻しているのです。
また、大脳辺縁系を巡る回路もあります。
扁桃体、海馬、視床下部といった大脳辺縁系に投射し、修飾された情報を大脳基底核に戻し、視床を介して大脳皮質に送るという回路です。
これらの回路を総じて大脳皮質-大脳基底核ループと呼んでいます。
手足や体幹部の運動の他、眼球運動や高次脳機能、情動などにも深く関与しています。
基底核-脳幹系
その他に基底核で精査された情報を無意識下で調整し、視床にフィードバックしています。
基底核-脳幹系と言われている回路です。
その他、前頭葉には前頭連合野や前頭前野、前頭眼野、補足眼野、運動野などがあり、それぞれが密接に関わっていますが、この前頭葉から直接脳幹に連絡している回路もあります。
その中で特に物を見るために最も重要な役割を果しているのは前頭眼野と補足眼野です。
前頭前野は瞬時に対象物に視点を合せるような指令を直接脳幹の上丘に送ります。
また、補足眼野は同じような指令をゆっくりした動作で行うように上丘に伝えます。上記の通り上丘には眼球を動かす筋肉に必要なミッションを通達する機能があります。
このように各脳領域には複数の回路から複雑に刺激が伝達されます。
つまり、視床から各脳野に伝わった刺激はフィードバックして脳幹を鼓舞するように働くのです。
その脳幹ですが、そこから動眼神経や滑車神経、外転神経といった眼球の運動を直接司る神経が出ています。網膜血流に影響を与える顔面神経も出入りしています。
活脳晴明鍼の脳幹への作用
そこで活脳晴明鍼の作用ですが、前頭葉の血流増加という光ポトグラフィーの結果から、前頭前野や前頭眼野を刺激していることが示唆されます。
また、脳波検査により側頭葉や後頭葉にも影響を与えていることが強く考えられます。
つまり、各連合野を刺激していることが考えられるのです。
それが、大脳皮質-大脳基底核ループ、大脳基底核-脳幹系の神経伝達を活発にしているかもしれません。
その他、脳幹網様体賦活系を鼓舞している可能性もあります。
脳幹網様体賦活系は大脳皮質の活動を支えています。
この脳幹網様体賦活系が強く作用すれば、前頭眼野や補足眼野が活性化する可能性があります。
そして前頭眼野や補足眼野の機能が促進されれば、動眼神経から外転筋や内転筋に伝わる刺激も増幅されるかも知れません。
それに三叉神経節から直接脳幹の中脳や橋、延髄に刺激が届く回路もあります。
したがって、これらの伝達系が眼底疾患の回復に寄与しているのではないかと推察するに至りました。つまり、脳幹の機能を高めているということです。
そうでなければ、脳卒中の後遺症の複視や眼瞼下垂、羞明、めまいなのどの症状が改善するわけがありません。
活脳晴明鍼の動眼神経への作用
脳幹からは眼球の運動を司る神経が眼球の筋肉に向けて伸びています。
その筋肉は内眼筋と外眼筋と呼ばれ、弛緩と収縮を行うことで物に視線やピントを合わせています。
外眼筋を支配しているのは中脳から出力する動眼神経・滑車神経と、橋から出力している外転神経と呼ばれる脳神経です。
更に動眼神経の副交感性の線維は毛様体筋と瞳孔括約筋を支配しています。
眼は角膜から順に前房、虹彩、水晶体、硝子体、網膜、ブドウ膜、強膜、視神経で構成されています。眼圧に最も関係があるのは毛様体筋です。毛様体筋は水晶体に付着し収縮や弛緩することにより水晶体の厚みを変化させることで遠近を調整しています。それだけではなく、房水の分泌から余分な房水を排出する働きもあります。つまり、毛様体筋が収縮することで、前房の隅にある隅角のシュレム管が開き、房水の排出を促進します。
弛緩することでブドウ膜・強膜排出路が開き房水の排出に拍車をかけます。この調節機能が衰えると、房水が停滞し、眼圧を上げることになります。
活脳晴明鍼が、動眼神経の機能を高めることは、脳卒中の後遺症の複視を改善させることからも大いに考えられます。動眼神経の機能強化は毛様体筋の機能強化にもつながるはずです。毛様体筋の収縮・弛緩機能が促進されれば、自ずと眼圧は下がるでしょう。
活脳晴明鍼の顔面神経への作用
顔面神経も顔に分布する脳神経です。顔面神経は運動性線維,知覚性線
維,副交感性線維からなる混合性神経です。表情筋などを支配する運動性の線維は固有顔面神経と呼ばれ,唾液や涙の分泌に働く副交感性線維と,味覚,耳介の知覚などの知覚性線維は中間神経と呼ばれます。つまり、顔面神経は大きく分けて3つの役割があるのです。
特に中間神経の副交感性線維は神経伝達物質のアセチルコリンで興奮し、NOを分泌させることにより血管を拡張させます。
また、顔面での顔面神経の分布は三叉神経に似ていますが、表に出入りしているところは異なります。三叉神経はこめかみ付近ですが、顔面神経は耳の下あたりです。
顔面神経はそこから膝神経節を経由して側頭枝、頬骨枝、下顎枝の3本に分かれ顔面を走行します。味覚や唾液の分泌に関係する副交感性の鼓索神経は顎あたりで下顎枝と交わります。
活脳晴明鍼施術時、これらの部位にあるツボも利用しています。
当然顔面神経の中間神経も刺激しているのです。
その中間神経が網膜の血流改善にも深く関係している可能性があります。中間神経が入り込む顔面神経の中継点の膝神経節や翼口蓋神経節への刺激が眼動脈を拡張させるとの報告があるからです。眼動脈は眼球内に入ると、網膜動脈と呼ばれるようになりますので、網膜動脈の拡張、即ち網膜血流の増加が示唆されます。
翼口蓋神経節からの神経が眼動脈に作用し、翼口蓋神経節は脳幹から膝神経節を介するコリン作動性神経の支配を受けているとのことです。つまり網膜血流の脳幹にある副交感系の神経がカギを握っているようです。
脳幹の副交感神経線維を含む脳神経として、顔面神経は当然ながら、動眼神経、舌咽神経、そして迷走神経が知られています。
そこで、活脳晴明鍼のレーザースペックルフローグラフィーを用いた調査から網膜血流が増加した理由、そのひとつとして顔面神経の中間神経に作用したことが考えられます。また、その他の副交感神経系の動眼神経や舌咽神経、迷走神経に影響を与えた可能性もあります。活脳晴明鍼は頬の骨や耳の下、耳介のツボも利用しているからです。その刺激が膝神経節に作用し、結果的に網膜血流を促進したということも考えられます。
活脳晴明鍼の臨床
ここで活脳晴明鍼によって改善効果の得られた体験例を紹介します。
●Aさん(女性・50代)は、眼圧が高く緑内障との診断を受けていました。初診時には、目や頭が締め付けられるような感じがすると訴え、目も充血していました。網膜の血流を改善することを目標として、 活脳晴明鍼並びに手足への鍼灸治療(以下通常の鍼灸治療)と共に、澤田流合谷などへのお灸を行いました。その治療後、「目や頭の締め付け感がなくなり、スッキリした感じがする」とのこと。目の充血もだいぶ改善しました。自宅でのセルフケアとして澤田流合谷のお灸を実践。Aさんはもともと眠りが浅く、3時間程度で目が覚めてしまっていましたが、数週間で、眠りが深くなるとともに目の症状も改善が見られてきました。半年後、目の締め付け感などが治まり、状態が安定。現在は、セルフケアだけで落ち着いています。
●Bさん(60代・男性)は、以前から糖尿病があり、15年くらい前に脳梗塞を発症。左上下肢に軽い運動障害と感覚異常の後遺症が残っていました。当院へは脳梗塞の後遺症の治療で来院。目が充血しており、聞くと、「眼圧が高めで眼科にも定期的に通っている。ただ充血したのは最近。目がかすむ感じもある」とのこと。糖尿病による網膜症(眼底出血)の可能性があり、眼科をとり急ぎ受診してもらったところ、眼底出血が確認されました。通常の鍼灸治療をしながら、セルフケアを実践。すると1ヶ月程度でほとんど出血が消えました。その後も、眼圧は落ち着いており、現在まで再発なし。継続治療中ですが、糖尿病の薬をへらすことができており、ヘモグロビンA1cの数値も少しずつ下がってきています。
●Cさん(70代・男性)は、最近、疲れ目が気になり、白内障を心配し、来院。通常の鍼灸治療の他に、沢田流合谷などへのセルフケアを自宅で継続。1ヵ月後に再診すると、「よく見えるようになり、眼鏡の度数が強く感じるようになった」と、Cさん。「まじめにお灸をやっている証拠かな。」と嬉しそうに話してくれました。 3回の治療で、目の不具合はほとんど改善。鍼灸治療は終了し、現在は自宅でのセルフケアのみ続けています。ちなみに、ツボを探す際に目印となる拍動が、より強く感じられることがあります。そういうときは、例えば、目が疲れていたり、眼圧が上がっていたりといった現象と連動している可能性あります。そんなときにも、このツボへのお灸はお勧めです。
●Aさん(60代・女性)
糖尿病が悪化して、右網膜動脈閉塞と眼底出血を起こしました。大学病院の眼科でレーザー光線や高酸素療法を行い、眼底出血は治りましたが、もやがかかったように物が見えたり、視野も狭窄していました。担当医は視覚障害者の認定を受けることを勧めました。そこで、失明するのが心配で当院に来ました。通常の鍼灸治療とともに、合谷に皮内鍼と温熱灸も行いました。当初の視力は右0.05、左0.1とのこと。1ヶ月ほど1週に2回の治療を行うと、もやもやが薄れ物が視やすくなったととのこと。3ヵ月後にはまったくもやが消え、視野も広がったように感じると言ってました。病院の検査でも、視力は右0.08、左0.8に改善していました。更に1年後には右0.2、左1.0に改善していました。そこで、更に1年間鍼灸治療を行ったが、それ以上の回復がみられなかったので、治療終了としました。
●Iさん(60代・女性)
平成21年10月に職場の検診で緑内障の疑いありとのこと、眼科で眼底や視野の精密検査をしたところ、眼圧が25mHgで視神経にも変化が見られるので、明らかに高眼圧緑内障と言われました。また、まだ視野狭窄はないのが不幸中の幸いだとも眼科医に言われたそうです。点眼薬をもらい、一度は眼圧が下がったが、心配ごとがあったり疲れたりすると、急に眼圧が25~30mHgぐらいに上昇する。そこで、眼圧を安定させるため、当院を受診。通常の鍼灸治療を行い、合谷と三里の自宅での温灸を指導しました。遠方なので来院は1ヶ月に1回でも良いから、そのかわり必ず毎日自宅灸を行うように指導しました。その後半年で眼圧が15~17mHgで安定しました。現在、忘れたころに来院しますが、眼圧は18mHg以上にはならないとのこと。肩こりや頭痛の治療がメインになっている。
●Oさん(70代・女性)
歳ですし、除々に視力が低下してきたので、白内障のせいと思っていたそうです。ところが平成24年1月下旬に急激に物が見えなくなり、かかりつけの眼科を受診すると、右黄斑円孔と診断されました。右視力0.2、左1.0とのこと。また、経過を観察し、悪化するようだったら、手術とのことでした。そこで、少しでも視力が改善すればと思い、知人の紹介で当院に来院しました。ひととおり通常の鍼灸治療を行ったあと、合谷と照海の自宅での温灸を教え、最低月に1回は来院するようにと言って、帰らせた。3月は来院できなかったが、かなり物が見えるようになったし、眼科の視力検査でも右視力0.6と改善傾向を示していたと電話で報告してきた。その後、4月5日に来院したときは、ほぼ発病前ぐらい物が見えるようになったと言っていた。眼科の検査でも黄班の穿孔は完治しているし、視力の改善が見られるので更に経過観察をするとのことだった。
●Mさん(50代・女性)10年ぐらい前に、右眼圧が32mHg、左26mgと高度の高眼圧緑内障と眼科で診断されました。視野狭窄もみられるとのことでした。点眼薬を使って一時は正常になっていたが、この数年再び左右とも25mHgぐらいに眼圧が上がり、房室に穴を開ける手術を行ったが、効果が薄い。そこで、知人の紹介で来院しました。通常の鍼灸治療を行ったあと、合谷と臂臑の自宅での温灸を教え、最低月に1回は来院するようにと言って、帰らせました。その後、3ヶ月ぐらいで眼圧は18mHg前後に下がり、1年ぐらい経過してもそのまま安定していました。血圧も150mHgぐらいだったのが、130mHg前後で安定しているとのこと。最近は3ヶ月に1度ぐらいの来院ですが、眼圧の上昇はみられず、視野狭窄も悪化していないとのことです。
●Mさん(40代・男性)
PCを操作しすぎたせいか、視力低下と結膜充血に悩んでいました。眼科で処方された点眼薬では解消しない。仕事のあとは、出来るだけ目を使わないようにしているが、一度充血すると、なかなか治まらないとのことでした。そこで、インターネットで当院の眼疾患に特化した活脳晴明鍼のことを調べ、来院しました。通常の鍼灸治療を行ったあと、合谷の自宅での温灸を教えました。その次に来院したのは、約1ヶ月後でしたが、目が疲れにくくなり、結膜の充血も起こらなくなったと喜んでいました。
●Gさん(60代・男性)
15年くらい前に脳梗塞を発症し、左上下肢に軽い運動障害と感覚異常の後遺症が残りました。当初、当院へは脳梗塞の後遺症の治療で来院。2回目の治療の際に、目が充血しており、本人に聞くと「眼圧が高めで眼科にも定期的に通っている。充血したのは最近。目がかすむ感じもある」とのことでした。糖尿病による網膜症(眼底出血)の可能性があるため、急いで眼科への受診をすすめました。次の治療のときに「眼科で眼底出血と診断された」とのこと。すぐに臂臑(ひじゅ)へのお灸と澤田流合谷(さわだりゅうごうこく)への温灸を追加し、自宅でも澤田流合谷に温灸をしてもらうようお願いしました。すると1ヶ月程度でほとんど出血は消えたそうです。再発の可能性もあるので、臂臑と澤田流合谷へのお灸は続けることを勧めました。その後、眼科へは一ヶ月に一度検査で通っていますが、眼圧は落ち着いており。現在まで再発の兆候はみられません。ヘモグロビンA1Cの数値も少しずつ下がっており、糖尿病の薬も減ったとのこと。継続して治療をしています。
その他にも臨床報告があります。ご興味のある方は下記のタブからご覧になってください。
【緑内障】の眼圧や網膜血流に対する効果
活脳晴明鍼の眼底や網膜血流、並びに眼圧に及ぼす影響について
りゅうえい治療院
臨床調査部
はじめに
活脳鍼は三叉神経を介して前頭葉並びに頭頂葉の血流を増加させ、脳卒中の後遺症としての運動麻痺や感覚麻痺を回復させる鍼灸治療である。また、活脳鍼は脳幹の梗塞や出血による複視、羞明、眼瞼下垂、めまいにも効果を発揮することが臨床により確かめられた。更に一般的な眼科疾患にも効果があることが判明している。数十名の緑内障やや黄斑変性、糖尿病や高血圧症からの網膜症や眼底出血の患者に施したところ、多くの症例で改善がみられたからだ。そこで、活脳鍼に眼疾患に繁用されるツボを加えた施術法である「活脳晴明鍼」に網膜血流を改善させる可能性があるのではないかと考え、本調査を行うことにした。活脳鍼が前頭葉並びに頭頂葉の血流を増加させることが光トポグラフィーを用いた調査により判明している。また、脳血流は網膜血流と相関関係があると言われている。つまり、脳血流と網膜血流は比例関係にあるのだ。網膜血流の改善は緑内障や黄斑変性、網膜症などの網膜疾患の進行を遅延させる効果があると複数の学会報告がある。なお、網膜血流の測定はソフトケア社製のレーザースペックルフローグラフィー(Laser Speckle Flowgraphy)を、眼圧計はMEテカニカ製のアイケアIC200を用いた。
調査概要
1)対象者
当院に通院している患者の中で、緑内障、黄斑変性、網膜症、あるいは網膜疾患の可能性が高いと眼科で診断された者、8名を対象者にした。内訳は、男性3名女性5名で、年齢は34~72才であった。またそのうちの5名は眼科医により低眼圧緑内障との診断を受けていた。なお、対象者は各々自由意思で参加してもらった。
2)調査方法
調査は2回に渡り行った。1回目の来院時、暗幕で遮光された暗室(照度10ルックス以下)に案内し、検査が可能な程度瞳孔が開いているか否かを確かめた後、同室でレーザースペックルフローグラフィー (Laser Speckle Flowgraphy)を用いて乳頭付近の網膜血流、並びに眼圧を測定した。更に活脳晴明鍼を施し、15~30分後に再度同様に網膜血流、並びに眼圧を測定した。なお、調査方法は下記文献を参考にした。健康人を対象にして無散瞳下で行っているからだ。
3)判定方法
活脳晴明鍼施術前と後の網膜血流と眼圧を測定し、血流が増加した場合を網膜血流を改善する効果ありとし、低下した場合を網膜血流を改善する効果なしとし、変化がなかった場合を不変とした。この結果を活脳晴明鍼の抗緑内障作用の判定基準とした。また、眼圧測定は網膜血流との相関関係を調査するために行った。なお、各測定値は±2%を誤差とし、判断基準から外すことにした。
4)副反応
予期できぬ悪症状があらわれた場合を副反応とし、直ちに調査を中止することにした。
5)併用治療やその他の注意
今まで服用していた薬剤はそのままで、新たに薬剤を追加服用することを禁じた。また、日常の生活習慣も今まで通りとした。
6)調査結果
表1に示すように活脳晴明鍼後、被験者全員に網膜血流の増加が確認された。また、眼圧については表2の通り、7割以上の改善率を示した。また、活脳晴明鍼後、被験者の多くが近くの物が見えやすくなったとか、視野が明るくなったと臨床症状の改善が認められた。
7)考察
活脳晴明鍼がどのような作用機序で網膜血流を増加させたのかは定かではない。恐らく副交感神経刺激作用により血管が拡張し、網膜の血流が増加したのではないかと推測している。鍼灸は血管拡張作用のあるアセチルコリンの分泌を高めることが様々な実験で立証されているからだ。アセチルコリンは血管内皮細胞の一酸化窒素合成酵素活性を高め、一酸化窒素の分泌を促進させることで血管拡張作用を示す。網膜には神経支配がないと言われているので、活脳晴明鍼の網膜血流増加はアセチルコリンが密接に関係しているかもしれない。また、活脳晴明鍼は手足や体幹からの神経の他、顔面の三叉神経や顔面神経への刺激により脳血流を増加させることが示唆される。正常眼圧緑内障患者の視神経乳頭の変性は脳血流低下が関与しているとされるので、活脳晴明鍼の脳血流改善作用は正常眼圧緑内障の症状改善に寄与することが期待される。また、眼圧の低下は網膜血流の増加による二次的な影響が推測できる。毛様体筋の収縮能が高まり、眼房水の排出が促進され眼圧が下がったことが関与している可能性もある。いずれにしろ、今後被験者数を増やしての再調査やα受容体などに対する作用も調べる必要がある。
尚、統計処理に関しては、Wilcoxonの符号付順位和検定を用いた。網膜血流と眼圧について、ともに有意差がみられた。
参考文献
緑内障治療薬配合剤の単回点眼による健常者視神経乳頭血流に及ぼす影響 笠原正行、庄司信行、森田哲也、平澤一法、清水公也 あたらしい眼科, 29(8): 1136-1140, 2012.
レーザースペックル血流計を用いた眼底血流の評価 玉置泰祐 日本レーザー医学会誌 18 (3), 17-21, 1997
鍼刺激に対する眼底局所血流動態変化のレーザードップラー眼底血流計を用いた検討 森和彦等 臨床眼科51巻6号 (1997年6月発行)
緑内障における眼血流改善治療の可能性 清田直樹 臨床眼科74巻1号(2020年1月発行)
眼底循環に加齢や生活習慣が与える影響 林直亨等 体力科学 第 69巻 第 1 号 14-18(2020)
表1 血流の変化と判定
識別番号 | 治療前血流量 | 治療後血流量 | 血流量の差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|
右 | 症例1 | 22.3 | 51.8 | 29.5 | 増加 |
症例2 | 44.4 | 78.5 | 34.1 | 増加 | |
症例3 | ー | ー | ー | ー | |
症例4 | 27.0 | 28.0 | 10.0 | 増加 | |
症例5 | 35.6 | 42.3 | 6.7 | 増加 | |
症例6 | 20.2 | 25.2 | 5.0 | 増加 | |
症例7 | 47.3 | 59.0 | 11.7 | 増加 | |
左 | 症例1 | 20.5 | 53.1 | 32.6 | 増加 |
症例2 | 62.6 | 75.7 | 13.1 | 増加 | |
症例3 | 23.8 | 45.4 | 21.6 | 増加 | |
症例4 | 24.2 | 43.5 | 19.3 | 増加 | |
症例5 | 26.6 | 34.8 | 8.2 | 増加 | |
症例6 | 41.7 | 53.2 | 11.5 | 増加 | |
症例7 | 47.9 | 59.0 | 11.1 | 増加 |
図1 活脳晴明鍼施術前後の網膜血流の画像
※症例3は加齢性黄斑変性による右眼失明
症例1 正常眼圧緑内障
症例2 正常眼圧緑内障
症例3 加齢性黄斑変性 右眼失明
症例4 正常眼圧緑内障
症例5 正常眼圧緑内障
症例6 加齢性黄斑変性
症例7 正常眼圧緑内障
表2 眼圧の変化と判定
識別番号 | 治療前血流量 | 治療後血流量 | 血流量の差 | 判定 | |
---|---|---|---|---|---|
右 | 症例1 | 15 | 15 | ±0 | 不変 |
症例2 | 13 | 11 | -2 | 低下 | |
症例3 | 17 | 15 | -2 | 低下 | |
症例4 | 16 | 17 | +1 | 上昇 | |
症例5 | 17 | 14 | -3 | 低下 | |
症例6 | 18 | 16 | -2 | 低下 | |
症例7 | 20 | 16 | -4 | 低下 | |
左 | 症例1 | 16 | 18 | +2 | 上昇 |
症例2 | 16 | 16 | ±0 | 不変 | |
症例3 | 14 | 12 | -2 | 低下 | |
症例4 | 19 | 13 | -6 | 低下 | |
症例5 | 17 | 15 | -2 | 低下 | |
症例6 | 17 | 14 | -3 | 低下 | |
症例7 | 18 | 15 | -3 | 低下 |
当院が自信を持ってご紹介できる当院独自の施術法の数々です。
当院独自の施術法
接骨
※本ホームページは顧問医の監修のもとに制作されました。
鍼灸治療と併用して漢方薬や和漢サプリメントも利用できます
併設漢方薬店
「なかよし漢方堂ショップ」のご案内
同建物の1階に漢方薬店を併設しています。ご希望に応じて、症状や体質にあった漢方薬や和漢サプリメントをご提案しています。
ヒトデやアワビの貝殻、緑豆の商品も取り扱っています。
体質や症状に合わせて杞菊地黄丸、苓桂朮甘湯、五苓散、二至丸、加味逍遙散など
当院のご案内
りゅうえい鍼灸治療院 一般鍼灸部
【受付時間】 | 午前 10:00~12:30 午後 14:30~18:30 |
【休診日】 | 火曜日、木曜日、第2・第4土曜日、日曜日、祝祭日 ※初診受付は月、水、金、第1・3・5土曜日となります。 |
【住所】 | 〒181-0012 東京都三鷹市上連雀2-3-12 高橋ビル2F 車でお越しの方は駐車場は2台分ございます。当院の建物横(軽自動車のみご利用可)と徒歩2分程度の所に契約駐車場がございます。満車の際は恐れ入りますが近くのパーキングをご利用ください。 |
ご予約はお電話で受付けています 予約制
tel. 0422-40-0222