「養精鍼」とは?

「養精鍼」は勃起力や性欲の低下に効果的な鍼灸治療です。

中高年男性の悩みのひとつに精力減退があります。

その原因の多くは男性ホルモンの分泌低下による更年期障害です。更年期障害は女性独特の疾患ではなく、男性にも起こるのです。症状としては、精力減退を始めうつや不眠、筋力低下など、男性ホルモンの分泌低下に伴っています。ただ、女性のように激しい症状でないのは、徐々に減ってくるからです。精力減退は文字通り精力の衰えですので、勃起力や性欲が弱まります。

この症状の改善に効果的なのが、「養精鍼」なのです。

「養精鍼」を行うと、血流が促進されることが示唆されますので、海綿体への血流が改善され、健全な性交の一助になることが期待できます。また、古くから定評のある性腺を刺激するツボは勿論のこと、活脳鍼も併用しますので、脳下垂体を刺激して性腺刺激ホルモンの分泌も高めることが考えられます。この結果、若いころのように勃起力や性欲が強まることが期待できるのです。

若年層の中性化

昨今、若年層でも性欲減退を訴える男性が増えています。専門医の調査でも血中の男性ホルモン量が低下している傾向とのことです。

Eテレのサイエンスゼロでも男性ホルモンの相対的な低下を危惧していました。

これは今始まったことではなく、人が集団社会を形成した頃からみられたそうです。生殖力のあらわれとされる眉骨の出っ張りが減り、平らになってきたことが根拠とされています。この眉骨の出っ張りは男性ホルモンの分泌量に比例しているとのことです。集団生活は競争心だけが飛びぬけて強くなると、争いが多くなり分裂の危機に追いやられ、仲間割れの元になります。そのため、闘争心を抑えることが次第に動物的な生殖能力を低下させたようです。更に現代は制約が多く電子機器が隅々まで行き渡っています。

ストレスによる男性ホルモンの減少も取りざたされています。その影響が顕著にあらわれれば生殖能力の低下は避けられません。

昨今ソース顔や肉食系が遠慮される風潮ですが、こと精力に関しては、肉食系に軍配があがるのは確かです。

男性ホルモンの量は?

ご自分の手の指の長さを比べてみてください。薬指は人差し指より短くないですか?

額は低くノッペラとしていませんか?

顎の張りが弱い方ですか?

物事に消極的で自己主張はしない方ですか?

肥満体ですか?

握力は弱い方ですか?

女性への興味が薄れましたか?

当てはまることが多ければ、男性ホルモンの分泌減少からの性能力低下が危惧されます。

実際、性交の回数が激減したり、勃起力が弱まっていたら、間違いなく男性ホルモンの分泌減少でしょう。

打開策は勃起に関わる神経を強化し、海綿体に血液が流入しやすくすることです。男性ホルモンの分泌を促進し、減少の原因となるストレスや不眠を緩和することも必要です。

中高年齢者のもならず、若年層の男子でも、性欲や精力が低下し、それが実生活に悪い影響を与えていれば、「養精鍼」をお勧めする次第です。

なお、女性の不妊症には温床鍼で対応しています。

温床鍼を詳しくはコチラ>>

古典医薬書にみる老化と精力減退

 約2000年前に発刊された黄帝内経素問の上古天真論という章に老化の原因や対策が記されています。黄帝と主治医の岐伯との問答形式で解説しています。黄帝が昔の人は100歳になっても身体の衰えが目立たないとのことだが、今時の人は50歳でも動きが鈍くなるのはいかなる理由か?と尋ねると、

昔の人は基本的な養生を守り、過度な飲食をせず、節度ある労働と休息を守り、慎んだ生活をしていたので、100歳になるまで心身ともに元気に生活をした上で亡くなったのです。ところが、今の人はおもむくままに酒を飲み、その勢いで房事にふけ、満足できないことにストレスを感じ、夜更かし朝寝坊の生活をしている者が多いのです。だから、50歳前後で身体が衰えてしまうのです。と答えました。

2000年前でも現在につながる養生法を説いていることに驚かされます。また、考えされられるのは規則正しく節度ある生活をしていれば、100歳まで元気に生きられるということです。現代社会に生きている者としては、身につまされる話です。せめて、平均定命までは楽しい生活を続けたいものです。

そのためには加齢による腎虚を緩和する必要があります。

腎虚とは東洋医学でいうところの老化現象です。

したがって、若いうちから適切な養生を続け、極力老化のスピードを遅らせるように努めるべきなのです。

そこで、お勧めするのが、「養精鍼」です。「養精鍼」は腎虚を和らげるために開発された鍼灸治療法です。

腎虚とは、腎臓が単なる尿を作り出す臓器ではなく、東洋医学が観察するように人体機能の根源に位置するものであり、様々な臓器組織に関連をもつということです。性エネルギーが枯渇していく時、我々の生命活動も終わっていくときであると知ることが出来ます。性エネルギーをどう継続し、どう用いるかは各自の課題ですですが、元気に長生きという健康寿命を延ばすということには変わりはありません。

したがって、「養精鍼」は元気に長生きし、命が果てる寸前まで性を楽しむことを目的としています。

そのため、「養精鍼」は、脳の視床から視床下部に刺激を送り、性腺刺激ホルモンなど身体の恒常性維持に役立つ刺激ホルモンの分泌を促進させることが示唆される活脳鍼とともに、古くから心身の衰えを緩和するツボ、更に性欲や勃起を高めるツボに鍼やお灸をすることで腎虚の緩和と精力増強をはかります

「養精鍼」の作用機序の推論

勃起に関わる中枢は上位の視床下部と下位の仙髄の2つが定説になっています。

視覚や聴覚、臭覚からもたらされる性的な刺激は脳の感覚野→前頭葉→大脳辺縁系→視床下部に伝わります。視床下部は本能的な欲求を司っていますので、性的な興奮を生みます。それが勃起をうながす刺激として脊髄神経を介して仙髄に伝わります。仙髄は下位の中枢として陰茎に作用して実際に勃起反応を起こさせます。また、視床下部は性腺刺激ホルモンも分泌しています。性腺刺激ホルモンは睾丸からの男性ホルモンの分泌を促進しています。男性ホルモンは精子の産生に必要なばかりか、性欲や勃起にも深い関係があります。特に中高年齢者の精力減退は男性ホルモンの分泌低下が引き起こすとされています。

性的刺激は仙髄から骨盤神経に伝わり陰茎の血管から一酸化窒素を誘発させます。これが刺激となり、サイクリックGMPが分泌され海綿体の平滑筋が緩みます。すると、海綿体に勢いよく血液が流入し、海綿体が膨張します。結果、陰茎が硬くなり勃起が成立します。ここまではリラックス神経と呼ばれる副交感神経の働きです。

但し、射精はヤル気ホルモンのアドレナリンが神経伝達をしていますので、交感神経にバトンタッチしなければなりません。このように自律神経系も性交に深く関わっているのです。

「養精鍼」の実際

「養精鍼」は東洋医学で生命の根源たる精を養うことで、いつまでも健全な性生活が営めることを期して命名した鍼灸治療です。まずはこめかみや口の周囲、耳の周りのツボに鍼を刺します。これは脳卒中の後遺症や精神神経疾患に効果的な「活脳鍼 かつのうしん」の応用になります。顔に分布する三叉神経や迷走神経、顔面神経求心路を介して、視床→視床下部→大脳辺縁系に伝わります。視床下部は性腺刺激ホルモンや自律神経の中枢があります。また、大脳辺縁系は性欲など本能的な働きがあります。臨床では「活脳鍼」の刺激は男性ホルモンの分泌促進や性欲の亢進を示唆する結果が得られていますので、性能力の向上に役立つことでしょう。命門(めいもん)というツボとの併用は更に男性ホルモンの分泌を助けるようです。

次に下位の勃起中枢である仙髄には、仙骨孔に存在するという上髎や次髎というツボに鍼やお灸を行います。勃起を促す仙骨神経に刺激が与えられるからです。夜間頻尿が改善した例が続出していますので、仙骨神経に与える影響は間違いありません。

更に勃起力を鍛えるツボも併用します。上記のツボが実際に勃起力を高める作用がありますが、それだけでは根本的な腎虚の対策になりません。

そこで、血流を促進する手足や体幹部のツボに鍼やお灸を行うとともに、ストレス緩和や睡眠促進のツボも利用します。

このような総合的な腎虚対策を行うと、勃起力だけではなく、夜間頻尿や足腰の弱り、老眼、耳鳴り難聴などの症状も緩和されます。精力は元気の余りなので、心身の機能も向上させることで様々な老化現象が改善するのです。

「養精鍼」の効果の裏付け

勃起は性的な刺激を受けると反射的に起こりますが、眠っている間でも無意識に勃起を繰り返します。朝方起こると朝立ちという現象になります。但し、男性ホルモンの分泌低下や糖尿病や高血圧症で動脈硬化による血流不全があると、朝立ちの頻度も硬度も減ります。

まったく起こらないこともあります。これは危険な兆候で、動脈硬化がかなり進んでいることが推測され、脳卒中や心筋梗塞の危険性が高まります。一方、性交が可能な勃起機能が温存されていれば、必ず夜間の勃起現象はおとずれます。それは健康であれば、若い人ばかりか中高年齢者でも自覚できます。

例え自覚できないとしても、判断材料となるテスト法があります。簡便なのは切手テストです。就寝時、陰茎が弛緩しているときにミシン目でつながった数枚の切手を陰茎の周囲を囲むように貼り付けます。朝目覚めたときに切手が切れていれば間違いなく通常の勃起能力があると判断します。若かろうが中高年齢者でも同じ判断です。

その他にエレクチオメーターというスケールのついた計測器を利用することもあります。同じく陰茎を巻くように取り付け、夜間の勃起現象の有無を調べることができます。これは勃起不可能な動脈硬化がないという証拠になりますので、性交に際して十分な勃起力が得られないとしてしても原因の多くは心理的なものになります。しかもエレクチオメーターは簡単に勃起の程度も測定できますので、ある程度精力が改善する様子も観測できます。

また、男性ホルモンのテストステロン値も勃起力や性欲に深く関係しています。特に加齢やストレスで減少し、性生活に支障が起こります。

そこで、3名を被験者として「養精鍼」の精力増強作用を調査しました。各々1週に2度、2週に渡り「養精鍼」を行いました。レクチオメーターによる夜間の勃起現象の変化は施術前と1週間後、2週間後に行い、周囲径の長さの変化を比較し、「養精鍼」の精力増強作用を検討しました。

1.エレクチオメーターによる調査

エレクチオメーターはスケールのついた帯状の検査器で、夜間の勃起現象を調べることができます。就寝時ペニスに巻き付け、ペニスの周囲径を記録します。そして起床時の周囲径との差を比較することで、勃起の有無が調べられます。勃起があれば陰茎が膨らみスケールも延ばされますので、起床時の数値は大きくなります。また、スケールによりどの程度の勃起か、その硬度も解ります。

エレクチオメーターと使用法

通常、睡眠中に何度か勃起現象が認められますが、勃起が確認できないとなると、EDの原因が何の病気によるものの可能性が高くなります。また、十分な勃起が確認されれば、普段性行為ができなくても精神的なEDと判断されます。また、その十分な勃起とは、一般的に2~3cm以上の伸長を指します。

夜間の勃起現象があらわれなくなる原因は、高齢者でしたら糖尿病や高血圧症などによる動脈硬化が主ですが、40~60代でしたら、その多くは男性ホルモンの減少です。更に若年層でしたらストレスが考えられます。

試験結果

結果は表1に示すように、3名とも「養精鍼」施術後の陰茎の直径の方が長くなっていました。十分挿入可能な勃起力が得られたのです。

表1

  施術前cm施術1週間後cm施術2週間後cm
Aさん (65才)就寝前 10.3
起床時 11.7
就寝前 10.5
起床時 12.5
就寝前 10.5
起床時 12.8
+1.4+2.0+2.3
Bさん (51才)就寝前   9.5
起床時 11.7
就寝前   9.5
起床時 12.8
就寝前   9.8
起床時 13.2
+2.1+3.3+3.4
Cさん (41才)就寝前 11.5
起床時 14.3
就寝前 11.6
起床時 15.3
就寝前 11.7
起床時 15.3
+3.0+3.7+3.6

2.男性ホルモン量の調査

同時にテストステロン値の推移も調査しました。テストステロンは代表的な男性ホルモンです。「養精鍼」を行う前と後で唾液中のテストステロンの量を測定したということです。

試験結果

結果は下に示すように、3名とも養精鍼施術後の方がテストステロン値が上昇していました。男性ホルモンは規則正しい生活や適度な運動、過不足のない食事、過労やストレス回避などで増加させることは可能です。養精鍼もその一助になることが示唆されました。

※テストステロン値は朝高く、夜低くなる傾向がありますので、
唾液の採取はAM10時~AM10時30分の間に行いました。

表2

施術前pg/ml施術1週間後pg/ml施術2週間後pg/ml
Aさん (65才)69.675.196.1
Bさん (51才)79.789.899.8
Cさん (41才)58.768.788.9

3.勃起硬度の自己判定

被験者ご自身でも勃起の程度について感想を述べて頂きました。指先で陰茎を押したときの感触を果物に例えています。

更に具体的な目安はとして、グレード1はこんにゃく、グレード2はみかん、グレード3はグレープフルーツ、グレード4はリンゴの硬さとしています。グレード2以下の場合はEDの可能性が高く、グレード3以上が挿入可能とされています。

グレード1グレード2グレード3グレード4

コンニャク

みかん

グレープフルーツ

リンゴ

試験結果

結果は表3に示すように2週間後は全員1~2ランクグレードアップしていました。

表3

  施術前施術2週間後
Aさん (65才)
コンニャク

グレープフルーツ
 
Bさん (52才)

グレープフルーツ

リンゴ
Cさん (41才)
みかん

リンゴ

ご自宅で可能な精力改善法

なお、上記の検査中は左薬指を伸ばす運動、腕組み、両腕でよいしょ運動も行ってもらいました。これらの運動は男性ホルモンを増やす可能性があります。

以上、精力増強鍼、「養精鍼」のご紹介でした。

鍼灸と併用して漢方薬や和漢サプリメントも利用できます

併設漢方薬店

「なかよし漢方堂ショップ」のご案内

同建物の1階に漢方薬店を併設しています。ご希望に応じて、症状や体質にあった漢方薬や和漢サプリメントをご提案しています。
ヒトデアワビの貝殻、緑豆の商品も取り扱っています。

体質や症状に合わせて杞菊地黄丸、苓桂朮甘湯、五苓散、二至丸、加味逍遙散など