減糖減肥鍼の臨床

T.Kさん 70歳 男性

糖尿病が悪化し、長年手足の末梢神経麻痺や精神神経症で悩んでいました。大学病院で加療していましたが、一向に改善しないので、家人の勧めで鍼灸治療を受けることになりました。

担当者より話を聞くと、甘い物が大好きでチョコレートや饅頭を日に何個も食べるとのこと。これでは血糖値が下がるわけがない。ともあれ、鍼灸治療は、原疾患に関わらず、痛みや麻痺を軽減できることが多い。痛みやしびれの多くは神経の機能低下だからだ。鍼灸治療により、神経への血流を増進させたり、直接神経に刺激を与えて伝達能を高めたりすると、その神経の機能が強化され、痛みやしびれが軽快すると言われている。足の痛みやしびれには、2寸鍼を用い坐骨神経根に届く鍼治療を、手のしびれには腕神経叢を刺激する鍼灸治療を行った。耳の付け根のツボ(降圧点)にも皮内鍼を固定した。更に照海や陰稜泉、尺沢、十三椎、崑崙、三陰交、陽稜泉、失眠などのツボにも糸状灸を施した。同様の治療を週に1回施すと、1ヶ月後には手足の痛みしびれが殆ど取れた。そして、3ヶ月には糖尿病も改善し、インシュリンの自己注射量が5単位から3単位に減らすことができた。ただし、時折、糖尿病のツボの圧痛が激しくなる。尋ねると、やはり甘い物の摂り過ぎである。特にチョコレートの食べ過ぎは血圧も上げるので要注意だ。このようなやり取りを続けながら2年が経過しつつある。

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