緑内障は眼圧を下げ、網膜の血流を改善すれば完治可能か?
検診で眼圧が高い、あるいは視神経乳頭陥凹拡大がみられるなどと指摘され、引き続き精密検査を受けることになる方がいます。それどころか、視野欠損がみられると診断される場合もあります。緑内障が進行している証拠です。
眼圧が正常なのに何故視野欠損なの?と疑問を持つ方もなかにはいます。眼科医に尋ねると、「眼圧が高いと急速に視野欠損が進む可能性があるが、低くても徐々に視野が狭くなることもある、特に日本人は眼圧が正常でも緑内障に罹っているケースが圧倒的だ」と言われます。
更に緑内障は悪化すると失明の危険性が高まるので、治療を続けなければならないとも言われます。そのため、眼圧を下げる点眼薬を目にさすことになります。現行の点眼薬の多くは目の自律神経に作用して房水の流入を抑制したり、排出を促進させたりし、眼圧を下げるのです。房水は角膜と水晶体の間にある房室を満たす水分で、溜まり過ぎると網膜に必要以上の圧力をかけてしまいます。その結果視神経を弱らせ緑内障が発生すると言われています。
点眼薬を続けると、次第に眼圧も下がり、視野欠損も悪化しなくなります。あたかも緑内障が治ったように感じます。そこで、これ以上眼圧を下げる必要があるのかと猜疑心にかられる方もいらっしゃるでしょう。
確かに何もしなくても進行しない例もありますが、多くはぶり返してしまいます。眼圧が低く抑えられた結果、視野狭窄の進行がストップしたと考えるのが妥当です。したがって、進行が止まったとしても、それで完治したと言えるわけではありません。しかも眼圧は個人差がありますので、人により正常域が異なります。低くても、それ以上落さなければならない場合もあるということです。可能な限り眼圧を低い状態に維持させておくことが肝要なのです。一生お世話になる大切な目ですから。点眼薬で進行が止まり、日常生活で支障のない程度の視野が確保できていれば御の字です。
ところが、眼科医の指示通り点眼薬をつけても、眼圧に影響を与える房水の流れを良くするレーザー治療を行っても、進行に歯止めがかからず、視野の狭窄部分が拡大してしまうことがあります。眼科医や薬剤師の言いつけを守ってきたのに、なんて酷い有様だと、憤慨したり落胆したりしてしまうでしょう。本人もさることながら、眼科医も歯がゆいことでしょう。
これは眼圧を下げれば必ずしも緑内障の進行が抑えられるということではなく、抑えられる可能性が高いということです。
ですから、失明に至る不幸なケースもあります。これが途中失明のトップに緑内障が挙げられる所以です。
緑内障は優秀な現代医学をもってしても、ハッキリした原因が判っていませんので、画期的な治療法が確立していません。
また、当院の顧問医の話によると、緑内障を悪化させ要因は遺伝、自律神経失調、強度な近視、うつ伏せ寝、睡眠障害などが知られていますので、これらも複雑にからんでいる可能性があります。
その他、最近網膜(眼底)血流不足も大きな要因としてクローズアップされています。大学や研究所からの眼底血流と緑内障の関係に関する報告があとをやみません。
目の血流が悪いと緑内障を発症する可能性が高いとか、進行するスピードが速いとか、眼底血流をリアルタイムで測定できるレーザースペックルフローグラフィーを用いた臨床調査の結果が学会に多数発表されているのです。
したがって、眼圧もさることながら眼底血流にも注視しなければなりません。
当院もレーザースペックルフローグラフィーを利用して、鍼灸による眼底血流の改善を確かめています。
我われはこの鍼灸施術を活脳晴明鍼(かつのうせいめいしん)と呼んでいます。
活脳晴明鍼により緑内障の進行が止まったことが確認された例が多々あります。なかには視野が広がった例もありますが、これは眼底血流の悪化で弱っていた網膜細胞が息を吹き返した結果だと考えています。当然死んでしまった網膜細胞を蘇らすことは不可能です。眼科医が言うところの失った視野は元に戻らないという所以です。弱った網膜細胞も眼圧が高く、眼底血流も不足していれば、遠からず壊死する可能性が高くなるでしょう。
では、眼底血流を良好な状態に保てば、緑内障は悪化しないかと言えば、それは否です。一生懸命活脳晴明鍼を行っても、眼科の視野検査で改善が認められないケースもあります。我々も何とか改善に持ち込みたいと思い、他の施術法を加えたりもしますが、無駄な労力に帰してしまうこともあります。限界を感じるときもありますが、驚くほど改善している例を目のあたりにすると、遣り甲斐を感じます。
いずれにしろ、緑内障は悪化しないうちに対処すべきは言うまでもありません。必ず眼科で診てもらい、適切な治療を受けなければなりません。進行がやまない方には活脳晴明鍼を併用することをお勧めします。必ず改善するとは断言できませんが、試してみる価値はあります。それに活脳晴明鍼は眼科の治療を邪魔するわけではありません。
ここで上記の説明を踏まえ、緑内障は完治するかという命題の答えです。
緑内障は何もしなくても進行がストップし、一生涯視野が維持されることもありますが、多くのケースで進行がみられる、眼圧を下げ眼底血流を促進させることで、そのリスクが低くなる、つまり治療成果は絶対的なものではなく、確率的なものなのです。
ごく稀に視神経乳頭陥凹拡大が解消した例があるとの報告を耳にしていますが、奇跡的な完治例をことさら強調しても意味がありません。
したがって、緑内障は眼圧を適正値に維持させ眼底血流を良くしておくことが賢者の選択なのです。
近い将来IPS細胞を利用した再生医療が主流になるはずです。視神経が再生されれば、失った視野を取り戻せるかもしれません。眼圧だ、血流だと言っているのも今の内だけかも知れません。

